現在、胆管系の疾患(癌、狭窄等)の外科的治療法としては、患部胆管を切除後、肝門部の胆管と空腸の吻合、あるいは肝切除、肝移植が施行されている。このような胆管の疾患に対し、再生医療により優れた人工胆管が作製できれば、胆管のみを置換する医療が可能となると考え、人工胆管の開発に着手した。人工胆管(生体吸収性ポリマー)は、鈴鹿医療科学大学、筏教授に作製していただいている。現在までの研究結果としては、自家骨髄細胞を伴ったこの人工胆管を雑種ブタの肝外胆管切除部に置換すると、このポリマーは生体内で吸収され、移植6か月後には、nativeの胆管と同様の肉眼的、組織学的形態を示し、機能的にも黄疸等の所見は示さず良好であった。これらの研究結果より、このような人工胆管を臨床の胆管系疾患の外科的治療に応用可能であることが示唆された(雑誌に投稿中。この人工胆管に対しては、特許申請を検討中である)。また、この人工胆管がnativeの胆管と同様の形態を示す課程において、組織学的には、この胆管上皮細胞は、肝側および十二指腸側から再生してきているのではなく、肝外由来細胞が分化したのではないかという組織像を示していた。現在、この再生してきた胆管上皮の幹細胞の検索、および人工胆管をヒトでの臨床応用が可能となるように、黄疸モデル、胆管パッチ等において、実験を試行している。
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