研究概要 |
我々は膵移植治療に向けて、β細胞への分化過程を明らかにし、膵内分泌細胞の幹細胞を特定することを目的としている。そのため、ラット90%膵切除モデルを用いて、(1)分裂期のS期の細胞を標識するBrdU(Bromodeoxyuridine)で細胞増殖の動態を経時的かつ細胞種別に観察してきた。(Arc Histo Cyto 62、337-346、1999)この実験系列において、(2)膵内分泌細胞の再生過程を観察し、また(3)神経マーカーであるPGP9.5(protein gene product 9.5)が膵発生および膵管結紮後膵炎の再生過程において、内分泌細胞のprogenitor cellのマーカーであることを見出した。(E J 49(1),61-74,2002) 今回は(1)の観察中、術後2日以降の観察では、内分泌細胞の増殖は腺房中心細胞からグルカンゴン陽性細胞の増殖と、ランゲルハンス島のグルカゴン細胞からインスリン細胞への分化増殖が確認されました。((2)Arch.Histol.Cytol 66、163-174,2003)また、(1)より、90%膵切除後、十二指腸を被うように膵増生が起ることことから、十二指腸からの何らかの因子が膵再生に影響しているものと推察し、CCKの拮抗剤を経口投与させたところ、膵増生がおさえられたことが判明しました。これにより、膵再生にはCCKが関与することが示唆されました。(論文投稿中)。さらに、我々は術後24時間内の腺房中心細胞と腺房細胞にも着目し、内分泌細胞の初期マーカーであるPGP9.5とPDX-1と内分泌ホルモンPP(Pancreatic polypeptide)と外分泌ホルモンであるアミラーゼを用いて、これらの陽性細胞が、内分泌細胞の前駆細胞である可能性の有無について免疫電顕を検討中です。
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