IL-2やIL-12などのサイトカインは抗腫瘍免疫を賦活化させることが知られているが、消化器固形癌のような低抗原性腫瘍に対しての効果は限られており、免疫療法単独ではなく化学療法などとの併用がより好ましい。消化器癌の中でも特に予後不良な膵癌においては肝転移が高率に生じるが、それに対する有効な治療法はいまだ確立されていない。そこでまず我々は、膵癌治療のfirst lineとして使用されるGemcitabineと肝局所の免疫機能を選択的に活性化させることを目的としたIL-2の門脈内直接投与との併用効果について検討した。マウスC57BL/6由来の膵癌adenocarcinoma (PAN02)を用い、C57BL/6Jの門脈内に直接注入し、膵癌肝転移モデルを作製し、これに対して、Gemcitabineを腹腔内投与、IL-2/IL12を門脈内注入モデルとして脾臓内投与(局所投与)する。ここで、Control群、Gemcitabine単独群、IL-2単独群、Gemcitabine+IL-2群に分け検討した。PAN02を投与したC57BL/6Jマウスは、28日後にsacrificeし、それぞれの群の肝転移数、肝重量を測定し、肝転移抑制効果につき検討した。その結果肝転移数は、Control群32個、Gemcitabine単独群24.7個、IL-2単独群2.7個、Gemcitabine+IL-2群1.4個(P<.005)、さらに肝重量においてもControl群1.77g、Gemcitabine単独群1.4g、IL-2単独群1.28g、Gemcitabine+IL-2群1.29gと肝転移モデルにおいてGemcitabine+IL-2の併用療法の有効性を認めた。さらに、IL-2の門脈内投与モデルとして、遺伝子導入線維芽細胞作製を行っている。マウスIL-2発現レトロウィルスベクター(pMFGm IL-2)の入った大腸菌(HB101)からプラスミドを抽出し、制限酵素であるXbaIとBamHIにて処理し、IL-2 cDNAを取り出し、電気泳動により目的のプラスミドであることを確認した。今後、パッケージングプラスミド(ViraPort System : pVPack-GPおよびpVPack-env)とともにリポフェクタミン法でHEK293細胞へ一過性に導入し、48-72時間後の培養上清を用いてマウス線維芽細胞に感染させる。IL-2遺伝子導入線維芽細胞においても同様の肝転移抑制効果を示すかどうか検討中である。
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