研究概要 |
マウスの心臓移植モデルは以下のものである。 C57BL/10(H2b)マウスの心臓を顕微鏡を用いて、CBA(H2k)マウスの腹部に移植する。ドナーの上行大動脈とレシピエントの下行大動脈、ドナーの肺動脈とレシピエントの下大静脈が端側吻合される。この組み合わせでは、通常ドナーの心臓は8から10日で拒絶される。このモデルで、ドナー抗原を手術7日前に経気管投与または経口投与することで以下の結果が得られた。免疫制御細胞の存在は、前処理されたレシピエントの脾細胞を無処置のCBA(H2k)マウスに移入し、その直後にC57BL/10(H2b)マウスの心臓を移植し、生着が延長することで確認された。 まず、抗原ペプチドの経口投与または気管内投与により心臓移植片の拒絶を完全に抑制する細胞群を誘導出来た。次に、この細胞群には免疫制御T細胞と免疫制御樹状細胞が存在していることが移入実験より判明した。これらの免疫制御T細胞と免疫制御樹状細胞はそれぞれ単独に移植心の拒絶を抑制できることが分かった。抗CD40抗体や抗CD4抗体の併用をドナー抗原投与時に行うと、完全に拒絶を抑制しうる免疫制御T細胞を誘導できた。免疫制御T細胞にはCD80/86シグナルや、TNF-familyのシグナル、PD-1などがそれぞれ独立して関与していた。一方、経気管投与の系においてサイトカインではIL-10の存在が誘導には必須であった。免疫制御T細胞と免疫制御樹状細胞による免疫抑制はドナー特異的であることが判明した。ドナー抗原とは異なる心臓(BALB/c)は拒絶された。免疫制御T細胞と免疫制御樹状細胞による拒絶反応の抑制は皮膚移植により感作されたレシピエントにも有効であった。免疫制御細胞の誘導には、Mycophenolate mofetil,Rapamycin deoxyspergualin,Ursodeoxycholic acid,H2-blocker,Cox-2 inhibitorは免疫制御細胞を誘導した。免疫制御T細胞の分画のひとつは、CD4+CD25+CTLA4+であった。 以上のことは今後の臨床応用に向けた基礎的実験としては、期待以上のものであった。
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