研究概要 |
小腸移植拒絶反応モデルを用いて、陰窩細胞とパイエル板に注目し、アポトーシス細胞の出現とアポトーシス誘導経路として知られるFas/FasLの発現について検討した。DNA fragmentationの検出には、ISEL(in situ end labeling)法を施行し、Fas,FasLに対しては免疫組織染色を行った。ISEL陽性細胞数は、陰窩細胞では異系群の拒絶反応の進行の途中にpeakを示し、Peyer板ではT細胞域にも出現の増加をみとめた。Fas,FasLともに拒絶反応の進行に伴い、陰窩細胞における発現の増強と、陰窩周囲の小円形細胞におけるFasLの発現をみとめた。小腸移植拒絶反応において、陰窩細胞とGALTのリンパ球にアポトーシスの出現増加とFas/FasLの経路の関与が考えられた。これらに対する理解は拒絶反応の早期診断に加え、免疫寛容を導くメカニズムを考える上で重要と考えられた。 研究結果を踏まえて、腸管免疫機構をはじめとする生理的機構を温存する、よりすぐれた拒絶反応の制御を考案する必要性を痛感した。そこで、近年再び注目されてきたgraftに対するirradiationに焦点を当てて検討することとした。すなわち、従来のFK506をはじめとする免疫抑制剤の投与に加え、graftのallorecognitionの抑制を促すことを目的として、ex vivo graft irradiationを施行し、その効果を検討することとした。加えて、irradiationに伴い変化が予想される腸管免疫機構の変化や移植腸管運動機能についても検討することとした。現在のところFTY720投与により小腸のリンパ球数は減少し,さらにこれにirradiationを加えれば,さらに小腸移植後の拒絶反応は抑制されることが予想され今後検討する予定である.
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