研究課題
基盤研究(C)
肝線維化や多臓器不全の要因としての腸管粘膜防御機能の破綻を防ぐグルタミン等のアミノ酸の効果が報告されてきた。我々は、腸管のエネルギー源、核酸の前駆体等栄養学的に注目されてきたアミノ酸の細胞内シグナル伝達系に及ぼす影響を検討した。ラット小腸上皮細胞であるIEC6 cellを培養し、アミノ酸を投与および除去した場合に、蛋白合成に関与する細胞内シグナル伝達系の一部であるp70 S6 kinase(p70^<s6k>)活性の変化を検討した。p70^<s6k>活性を最も惹起するアミノ酸は、グルタミンではなく、アスパラギンであり、グルタミンの効果は低かった。また、アスパラギン除去によりp70^<s6k>の活性が低下したが、グルタミン除去による活性低下はなかった。p70^<s6k>以外のcell growth-related kinaseであるAkt、cdk2、p90^<rsk>等へのアミノ酸の影響は明らかではなかった。これによりアミノ酸の効果がこの経路に特異性が高いことが推測される。アスパラギンの培養液の溶解の限界は、10mM程度で、10^2mMの投与は困難であった。アスパラギン投与によるp70^<s6k>の活性化は、1時間以内にピークとなりプラトーに達した。一方で、アスパラギンは不足したときに細胞に強い増殖抑制効果が認められた。アスパラギンを分解するAsparaginaseによっても細胞増殖抑制が認められたが、培養継続により増殖が回復する現象が認められ、Asparagine synthetaseの影響が考えられた。アスパラギンは、グルタミン同様現行のアミノ酸輸液製剤に含まれない。これまで外傷や術後の侵襲時に、腸管の蛋白合成に関与してグルタミン投与の重要性が報告されてきたが、侵襲早期、少なくとも30分から6時間までの初期蛋白合成においては、細胞内シグナル活性化の点より、アスパラギンを補う必要性があると考えられた。
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