【研究の背景と目的】 胃電図で測定される2.5〜3.5cpmの波形は、electrical control activity(ECA)と呼ばれ胃ペースメーカーから発生する電気活動と考えられてきた。その胃ペースメーカーは、胃上部大彎側に存在しカハール神経細胞からなるとされてきたが、その局在を実際に同定した報告はない。しかし、術中に胃電図をリアルタイムに測定し周波数解析できれば、ペースメーカーの局在を術中検索し、癌の手術でも腫瘍との位置関係によっては可及的に温存することで、胃切除後残胃機能温存につながると考え、胃ペースメーカーの局在を同定するナビゲーションシステムを開発することを目的にした。 【方法】 1)「術中胃電図検査」は、学内倫理委員会に申請し承認を得た。 2)一方「術中胃電図測定システム」は、文献から得られた胃壁で直接誘導された波形を模擬波形として設計し、数種類の電極ユニット、リアルタイムに局在診断するためのプログラムも含め本学工学資源学部電気電子工学科の協力で作製を進めた。 3)システムの完成を受け、胃切除術予定患者を対象に術中胃電図検査のインフォームドコンセントを得て同意書を作製した。術前に既存の経皮的胃電図測定システムで胃電図を測定し胃ペースメーカーから発生すると考えられる3cpmの波型が出現していることを確認しておいた。 4)開腹に際し胃切除前に、電極ユニットを胃に密着させ電位変化を測定した。データは、データレコーダーに記録しFFT解析すると伴に、パーソナルコンピュータに転送し局在診断をリアルタイムに行えるプログラムで解析した。 【結果】 開腹手術中に胃壁に電極ユニットを密着させることで、胃ペースメーカーから発生しているECAを同定し、その伝播方向を探査できる胃ペースメーカー測定システムを作製した。同システムを複数個所で測定することで、ペースメーカーの局在を同定可能である。
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