研究課題
1)腹腔鏡手術は拡大視効果により神経周囲の解剖が明瞭に観察できることから、迷走神経温存術式の手技の検討をした。腹腔神経温存では、体重減少率は、従来の開腹手術では10%であったのに対して、迷走神経温存では5%前後に留まっており、また術後の体重の回復も神経温存例で早かった。下痢は従来の手術では8%ほどに認められたが、温存手術では2%に認めるのみであった。肝枝温存により、胆石症の発生率は従来手術では14%前後に認められたが、温存手術では現在までに胆石症発症がないなど、術後長期のQOLは良好に保たれた。一方、現在までに神経温存が行われた40例においては、経過観察期間40ヶ月で再発を認めず。(第58回消化器外科学会)。2)分子生物学的手法:教室では抗癌剤感受性に関する遺伝子、蛋白の解析に精力的に取り組み、すでにreverse transcript PCR法によるmRNAレベルでの遺伝子発現や免疫染色による蛋白レベルでの検討を行ってきた(Annals of surgical Oncology 9:599-603、2002、第92、93回アメリカ癌学会)。3)外科実験動物:腹腔鏡下手術の新たな手技開発のため、特に豚を用いた検討を行ってきた。超音波凝固切開装置とバイポーラシザーズ、モノポーラ電気メス、メスて切離した場合の周囲臓器の温度と熱変性が及ぶ距離を豚を用いて検討した。その結果温度は、モノポーラ、超音波凝固切開装置、バイポーラ、メスの順であり、熱変性の距離も同様であった。以上の点から、神経損傷と止血のバランスからはバイポーラが有用という結果であった。今後、神経損傷や腫瘍に及ぼす熱の影響を分子生物学的見地より明らかにする予定である。
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