研究概要 |
1.平成15度の研究概要: 目的:大腸癌肝転移の切除後には肝内再発が多く見られる.これは,手術時に見逃された肝内微小転移の増大によるものと考えられる.本研究では,「肝内微小転移を免疫組織化学的に検出できるか否か」および「肝内微小転移の臨床的意義」を解明する. 方法:1996年までに当科で切除された大腸癌肝転移53症例を対象とした.肝内微小転移を「組織学的検索により初めて発見される肝転移」と定義した.各々の症例において,肝切除標本のパラフィン包埋ブロックから2〜7個の組織切片を作成し,腸管上皮に特異的とされる抗サイトケラチン20抗体を用いた免疫組織化学染色を行って肝内微小転移巣を検出した. 成績:53例中46例(87%)の肝転移巣はサイトケラチン20陽性であった.一方,周囲肝実質の正常肝細胞および胆管上皮は全例で陰性であった.肝転移巣がサイトケラチン20陽性の46例中32例(70%)において肝内微小転移巣が発見された.肝内微小転移巣は,多発肝転移(P=0.047)および切除後の肝内再発(P=0.003)と関連した.肝切除後の生存は,肝内微小転移陽性例(10年生存率22%)が陰性例(同64%)に比し不良であった. 結論:大腸癌肝転移において,免疫組織化学的手法により肝内微小転移巣を検出することが可能である.肝内微小転移は高度な肝転移の指標であり,切除後の肝内再発および予後の予測因子である. 2.今後の展開: (1)1997年度以降の症例についても検討して症例数の増加を図る. (2)Ki-67染色により肝内微小転移巣が生きている(vividな)癌細胞群であるか否かを検討する. (3)大腸癌ではサイトケラチン20陰性例も1〜2割程度存在するため,肝転移例においてサイトケラチン20陽性例と陰性例とを比較検討する. (4)予後不良な肝内微小転移陽性例を対象として補助化学療法の有効性を検討する.
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