癌細胞において血管新生増殖因子は細胞増殖および転移に関与する重要な因子として知られている。2001年、新しい血管新生増殖因子、Endocrine glands-derived-Vascular endothelial growth factor(EG-VEGF)がcloningされた。ヒト正常部におけるEG-VEGF Messenger RNAの発現部位は卵巣、精巣、胎盤などのhormone産生細胞に限られており、またVEGFとは相補的なことが多く、この2つが協調して作用していることが考えられている。今回大腸癌におけるEG-VEGF mRNAの発現を検討した。対象は当病院において切除した進行大腸癌113例として、quantitatively PCR/Southern blot法を用いてEG-VEGF mRNAの発現量を測定し、臨床病理学的因子との関通性について検討した。隣接大腸正常粘膜においてEG-VEGF mRNAの発現は全症例で認められなかったが、大腸癌原発巣では陽性症例は31例、陰性症例は82例に認められた。臨床病理学的因子との検討ではEG-VEGF遺伝子発現陽性例が陰性例と比較して深達度、脈管侵襲、リンパ節転移、肝転移が陽性となる頻度が高いことが認められた。また多変量解析にて予後因子を検討するとEG-VEGF遺伝子が独立した予後因子であった。 以上より、大腸癌においてEG-VEGF遺伝子は血管新生に重要な因子であることが推測され、また新しい予後因子となる可能性が考えられた。なお現在、EG-VEGF分子の作用機序を詳細に検討中である。
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