大腸癌をはじめとして様々な消化器癌において癌細胞の増殖、転移への対策が現在もなお最大の課題である。特に大腸癌では癌細胞の特性として血行性転移が高率で、この治療効果が生存率向上の鍵をにぎっている。最近、新規血管新生促進因子endocrine glands-derived-venous endothelial growth factor(EG-VEGF)は内分泌腺細胞の内皮に作用する分子としてcloningされた。大腸組織はestrogen receptorを持つことからEG-VEGF分子が大腸癌に関与するか検討をおこなった。まず、当科におけるヒト大腸癌切除症例113例に対してEG-VEGF分子の発現を検討すると27.4%に認められた。(隣接正常粘膜では発現認められず。)また低EG-VEGF発現型大腸癌細胞株にEG-VEGF遺伝子を導入後、マウスに移植して増殖、脈管新生ならびに肝転移について検討をおこなったところ、control細胞と比較してEG-VEGF導入細胞は細胞増殖、脈管新生ならびに肝転移が有意に促進されることが認められた。大腸組織において新規血管新生因子EG-VEGFは癌特異的な血管新生因子であることが示され、新しい抗血管新生療法のターゲットとなる可能性が考えられた。
|