研究概要 |
<背景>肝切除後エンドトキシン誘発性肝障害では,Kupffer細胞および活性化された好中球が中心的な役割を果たしていることが報告されている.しかし,リンパ球系細胞の動態について詳細な検討はなされていなかった.<方法>雄性Fisherラットに70%肝切除施行48時間後,LPS1.5mgi.v.を行った.anti-lymphocyte serum (ALS)またはanti-immunoglobulin μ-chainの術前投与により,それぞれリンパ球系細胞,B細胞を特異的に抑制した(L(-)群,B(-)群).T細胞系の抑制モデルとしてヌードラット(T(-)群)を用いた.LPS投与24時間後生存率,血漿中ALT,TNF-α,IL-6,IgM,CH50値,および肝組織所見を検討した.<結果>24時間生存率はコントロール群では20%,L(-)群80%,T(-)群0%,B(-)群100%であった.コントロール群では,LPS投与1時間後の血漿TNF-α,IL-6値,4時間後の血漿ALT値は,LPS投与前と比較して有意に上昇していた.またコントロール群のIgM値はLPS4時間後に前値より有意に上昇し,CH50値は下降した.コントロール群の肝組織ではLPS投与4時間後に著明な壊死像を認め,免疫染色ではIgMおよびC3の沈着が見られた.B(-)群では血漿TNF-α,IL-6,ALT値の上昇,CH50値の下降は抑制され,肝組織障害の改善が認められた.<結論・考察>肝切除後LPS誘発性肝障害において,その発生にB細胞が関与し,LPS投与後のIgM過剰産生が肝障害の一因となっている可能性が示唆された。本研究の成果は、Journal of Surgical Researchに掲載予定(in press)である。
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