研究概要 |
食道癌の中でもリンパ節転移の有無が予後に大きく寄与する、表在食道扁平上皮癌31症例に対し、Microdissection法を併用したComparative Genomic Hybridization(CGH)法による染色体、遺伝子異常の解明を行った。その結果、8番染色体長腕(8q24)と20番染色体長腕(20q12)の増幅が統計上有意差をもってリンパ節転移の有無と関係していた。リンパ節転移に関して、これらの染色体領域には、食道扁平上皮癌の進展に関する重要な癌遺伝子または癌抑制遺伝子の存在が強く示唆されると考え、BAC(Bacterial Artificial Chromsome) libraryを利用し、上記染色体異常領域のDNAマイクロアレイを作成し、未知なる癌関連遺伝子を追求することを目的に当研究を始めた。新たに表在食道扁平上皮癌においてリンパ節転移の有る4症例、リンパ節転移の無い5症例で染色体CGH解析を行った。さらに、遺伝子レベルでの解析が可能なゲノムDNAアレイを用いたアレイCGH解析により、上述した二つの染色体領域で高頻度に異常が起こっている遺伝子の探索を試みた。今回新たに行った9症例の染色体CGH解析では、従来の解析結果と同様に2p、3q、5p、7p、8q20、20q12-qterにおいて高頻度な増幅が確認された。 今回の調査では8q24,20q12-qterは高頻度に増幅していたものの、これらの領域と表在食道扁平上皮癌のリンパ節転移との間に相関は認められなかった。 表在食道扁平上皮癌21症例における8q24,20q12-qter領域を詳細に解析したところ、増幅、欠失合わせて45個の表在食道扁平上皮癌3関連候補遺伝子群を特定することができた。また、これらの中には新規遺伝子26個が含まれていた。
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