研究概要 |
【目的】鏡視下と開腹手術の術後各臓器での遺伝子発現プロファイルの相違を経時的に比較検討し、鏡視下手術で腫瘍増殖が緩徐である機序の解明を行う。 【方法】マウス皮下にcolon26細胞を移植し、開腹、気腹群で術後腫瘍を計測 マイクロアレイ法により各臓器(脾、肝、肺)と腫瘍の遺伝子発現を検討 Real time PCRによる確認。マウス血清および腫瘍においてpick upした遺伝子の蛋白レベルでの変化をWestern blotで確認した。 【結果】 開腹、気腹、麻酔のみ群で術後皮下腫瘍を観察し、開腹群で有意に腫瘍の増大を認め、特に術後2日目までの間が有意に腫瘍の増大率が大きい事が分かった(p=0.021) 原因を明らかにするため、マイクロアレイ法を用いた肝臓、脾臓、肺および腫瘍での遺伝子発現プロファイルの検討では、開腹群で特異的に低発現する遺伝子としてTIMP3、高発現する遺伝子の一つとしてPI3 kinase p110α catalytic subunit (Rik3ca)とPI3 kinase p85α regulatory subunit (Pik3r1)が同定された。 発現変化はreal time PCRでも確認できた。アジレントのマイクロアレーの結果に対して16遺伝子をピックアップし3臓器+腫瘍において7 time point + normalの検体のReal time PCRを行った。(臓器によってその発現パターンがマイクロアレーの結果と一致するものとそうで無いものがあり、cDNA作成時の逆転写酵素の違いや、Real time PCRの検出限界、内部コントロールの考慮なども必要だと考えられた。) TIMP3は、MMP-1,2,3,7,9,13,14,15を非可逆的にinactivateする。OverexpressionによってFas-associated death domain-dependent mechanismでのアポトーシスを来す(JBC2002)。肝臓、腫瘍、また分泌蛋白であるため血清のWestern blotで術後1日目にLASおよびOPENの群で蛋白の発現が低下し、術後7日目までその影響が持続する事がわかった。 【考察】Pik3caおよびPik3r1は癌での発現亢進が報告されており、Pik3caはPTENの存在に関わらずp53によってその発現が抑制される事が報告されている(Genes Dev 2002)。また、PI3 kinaseの活性化はSkp2の発現を亢進させるという報告がある。Skp2の発現をReal time PCRで確認したところ、術後LASとOPENの群で腫瘍部での発現が亢進しており、p27の蛋白発現はLASとOPENの群で低下していた。PI3 kinase subunit mRNAの発現の上昇は肺や肝臓でも認められるにも関わらず、Skp2発現の上昇は腫瘍部のみで認められた。
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