研究概要 |
肝線維化モデルにおける骨髄細胞の供給と分化誘導を検討するために,放射線照射マウスの骨髄を有核細胞にGFP(green fluorescence protein)を発現するグリーンマウス骨髄細胞で置換し、4週間後の骨髄が生着した時点で胆管結紮により肝線維化モデルを作成した。経時的に組織標本を作成し、肝線維化の進行とともに、免疫染色による肝構成細胞への分化を観察した。この際、蛍光免疫多重染色により各細胞の分化過程を明らかにし肝線維化過程における骨髄由来細胞の関与を検討した。 生後6週のC57BL/6マウス(以下B6)に致死量の放射線(total 12Gy)を全身照射後、グリーンマウスの全骨髄細胞1×10^6個を静注し,4週間後に総胆管を結紮切離した。術後、1、3、7、14日目に大腿骨骨髄および脾におけるキメラ率の変化を測定し、さらに肝線維化の過程における骨髄由来細胞の動態を免疫組織学的に検討した。 その結果、骨髄細胞数は無処置マウスでは4.1±0.3×10^6個/mlであったが、移植4週間後には4.6±0.8×10^6個/mlと無処置群と同程度まで回復した。このとき骨髄および脾のキメラ率はそれぞれ72.1±9.1%、55.0±8.2%であった。胆管結紮により肝では胆管および胆管周囲の細胞外基質が増加し、7,14日目には多くの紡錘形のGFP陽性細胞を認めた。これらGFP陽性細胞の一部は抗αアクチン抗体および抗GFP抗体による免疫二重染色でdouble positiveであることが共焦点レーザー顕微鏡により観察された。さらに14日後ではGFPとFSP-1を同時発現している細胞も観察された。以上の結果より、肝線維化の過程で出現する線維芽細胞および筋線維芽細胞の一部は骨髄由来細胞である可能性が示唆され、さらにこれらの骨髄由来細胞は従来考えられていたより早期から線維化の過程に関与していることが明かとなった。
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