研究分担者 |
真辺 忠夫 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80127141)
竹山 廣光 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (00216946)
岡田 祐二 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (10305550)
山本 稔 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70347417)
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研究概要 |
術前放射線療法が直腸癌の局所再発を防ぐ目的で用いられており、局所再発の低下のみならず生存率の向上にも寄与する可能性が示唆されている。一方、癌の転移にはシアリルルイスa抗原(s-Le^a)やシアリルルイスx抗原(s-Le^x)などの細胞接着分子が重要な役割を果たしていることがわかってきている。本研究では大腸癌細胞株を用い、放射線照射によるs-Le^aやs-Le^xなどの癌細胞表面の細胞接着分子の発現の変化や癌細胞の血管内皮細胞への接着能の変化を観察し、放射線照射が転移のメカニズムにどのような影響を与えるかを検討した。 肝転移能を有する大腸癌細胞株HT-29,WiDrおよび肝転移能を有さないCOLO 320DM,Caco-2を用いs-Le^aとs-Le^xの発現を観察し、X線照射群と非照射群において大腸癌細胞株のs-Le^aとs-Le^xの発現の変化とHUVECsへの接着能の変化を比較した。またanti-s-Le^a Abおよびanti-s-Le^x Abを投与した時の大腸癌細胞株のHUVECsへの接着能の変化を比較した。 その結果、1)経脾肝転移モデルで肝転移能を有するHT-29とWiDrではs-Le^aとs-Le^xを発現していたが、肝転移能を有さないCOLO 320DMとCaco-2ではs-Le^aとs-Le^xの発現はほとんど認められなかった。2)X線照射によりHT-29とWiDrではs-Le^aの発現の低下が認められたが、COLO 320DMとCaco-2では発現の低下が認められなかった。3)X線照射によりHT-29のみs-Le^xの発現の低下が認められたが、WiDr、COLO 320DM、Caco-2では発現の低下が認められなかった。4)X線照射によりHT-29とWiDrではHUVECsに対する接着能は低下が認められたが、COLO 320DMとCaco-2では接着能の低下が認められなかった。5)anti-s-Le^a Abを投与することによりHT-29とWiDrは接着能の低下が認められたが、COLO 320DMとCaco-2では接着能の低下が認められなかった。6)anti-s-Le^x Abを投与ではHT-29,WiDr,COLO 320DM,Caco-2のいずれも接着能の低下が認められなかった。 以上より、肝転移能を有する大腸癌細胞株ではX線照射によりs-Le^aの発現が低下し、血管内皮細胞への接着能も低下することが示され、X線照射により肝転移を抑制できる可能性が示唆された。
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