研究概要 |
膵癌の診断は極めて困難であり、予後が悪い原因となっている。膵癌の術前診断に核磁気共鳴画像(MRI)が応用されているが、癌病巣の明確な描出による質的診断能は充分でない。そこで、膵癌に対するMRIの診断能を向上させるために、ヒト膵癌に対するモノクローナル抗体をガドリニウムと標識することを試みた。キメラ化A7-Fab分画をガドリニウムで標識する前段階としてモノクローナル抗体としてヒト膵癌と高率に反応するA7とを用い、ガドリニウムで標識した。モノクローナル抗体A7とキレート剤Isothiocyanobenzyl EDTA(同仁化学)を混和し、A7-EDTAを作製した。さらに塩化ガドリニウム(和光純薬)を反応させ、A7-ガドリニウムを作製した。A7-Gdをヒト血清中にて0、24、72、96、144,168時間それぞれincubateした後、それぞれの検体をPD-10カラム(アマシャムバイオメディカル)にてゲル濾過し、各検体毎の抗体量とGd量を測定した。尚、抗体量の測定は分光吸光度計で、Gd量の測定はICP(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy)で行い、血清中での安定性を検討した。その結果、各時間毎の抗体の分布とGdの分布曲線は一致した。測定開始後144時間目まで非結合ガドリニウムは検出されなかった。このことからGd標識モノクローナル抗体A7の血清中での安定性は保たれていると考えられた。Gd3+標識A7の抗体活性を非標識A7と膵癌培養細胞を用いたinhibition assayで比較した。その結果、Gd3+標識A7の抗体活性はA7単独とほぼ同等であった。以上より、Gd標識モノクローナル抗体A7は血清中で安定であり、MRI造影剤として有用性の検討をすすめる価値があると考えられた。
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