胆道閉鎖症術後の肝の線維化に関わる細胞外マトリックス産生細胞であるhepatic stellate cell(HSC)の活性化を検討するために、はじめに本症臨床例と対照例における肝組織の病理学的検討を行った。すなわち、日道閉鎖症の臨床例17例(平均日齢70.6日)と対照として胆道閉鎖症以外で肝生検を受けた4乳児例(平均日齢79.8日)の手術時に得られた肝組織を用いて、通常のH&E染色とベルリン青による鉄染色、さらに、αmooth muscle actin(SMA)、デスミン、グリア線維性酸性蛋白、シナプトフィジン、CD3、CD68、I型コラーゲン、IV型コラーゲンに対する抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。 肝組織の線維化は0〜4で評価し、αSMAが高度に発現している細胞を活性化したHSCと判定してその程度をスコア化した。また、HSCの機能を評価するためにデスミン、グリア線維性酸性蛋白、シナプトフィジン、CD3、I型コラーゲン、IV型コラーゲンの発現を同様にスコア化して判定した。 その結果、葛西手術の時期には半数以上の胆道閉鎖症の症例でgrade2〜3の肝線維化が出現しており、その中に高度の活性化HSCの発現が見られた。また、CD68陽性のKupffer細胞の増加も認められた。一方、術後に再度肝生検を行った症例の中で、葛西手術後の経過良好例では肝線維化の明らかな改善が認められ、活性化HSCの発現の低下が認められた。 すなわち、胆道閉鎖症では生後2〜3ヵ月時の葛西手術の時期に高度な肝の線維化と線維化に関わる因子の発現が見られるが、一方で葛西手術後に肝線維化が進行しない症例も存在し、HSC活性化の分子機構を制御することにより肝線維化を抑制できる可能性が示唆された。
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