(11)C-cholineの臨床応用に対する倫理委員会の許諾が未だ得られなかったため、本期間中は1)試薬合成法の改善、2)動物実験による基礎的研究、また、3)FDGによるPETで臨床研究を継続して行った。1)ではSep-Pac[11C]メチレーション法に基づいた11C-choline自動合成法を開発し、臨床応用に耐え得る高い収量率(88%)を達成した。また、[11C]メチルトリフレートを既存の装置に換置してループ標識合成を可能とした。2)ではネズミ脳で虚血のアセチルコリン代謝に及ぼす効果を[11C]choline標識率で定量し、acetyl-L-carnitine投与が虚血後脳機能障害を改善する可能性を証明した。3)では根治的放射線治療を施行した食道進行癌患者で放射線治療終了後3週間以内にFDG-PETを施行した。試薬注射後45分と90分で癌病巣のSUVを計測し、2測定値間の増減とその後の臨床経過を対比検討した。isotope注入45分から90分後にSUVが増加した6症例中5例では早期に再発し、減少した場合には6ヵ月以上の腫瘍制御が得られた。SUV増加がみられても再発しなかった1例では、PET施行時の粘膜炎が他の症例とくらべて高度にみられた。本研究は、放射線性食道炎によるトレーサの集積と腫瘍への集積とを鑑別する方法として考案したものであったが、偽陽性が16%にみられた。FDGをトレーサとしている場合の限界と思われ、新たな腫瘍トレーサによる検討が必要と考えられる。
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