研究概要 |
大量調整したヒトIGF-1 cDNAのアデノウイルスベクター(AxIGF-1)を2回の塩化セシウム密度勾配超遠心法で濃縮し、段階希釈したAxIGF-1を96穴Plateに調整した292細胞へ感染させて力価測定を行った。次に、IGF-1遺伝子を導入する肝細胞でIGF-1が細胞内修飾を経て成熟蛋白となるかを調べるため、ヒト培養肝細胞であるHepG2にAxIGF-1を感染させ、そのconditioned mediaを用いてimmunoblottingしたところ、成熟蛋白と同様の分子量のところにbandを確認した。さらにAxIGF-1を感染させた293細胞のconditioned mediaでも同様の分子量のbandがみられたため、IGF-1蛋白を成熟蛋白に修飾する酵素群は肝細胞に限らず存在すると思われた。さらにヒトの培養腸上皮細胞であるIntestine407を用いて増殖試験を行ったところ、AxIGF-1を感染させたHepG2のconditioned mediaではIntestine407の有意な増殖効果が確認され、Flowcytometryを用いたS期細胞の割合も有意に増加が確認された。われわれの作成したAxIGF-1を用いて肝細胞へのIGF-1遺伝子を導入することにより、腸管大量切除後の消化吸収障害に対して腸管上皮の増殖を促し、消化吸収の改善につながることが予測された。 その他、インスリンのアデノウイルスベクターを用いて経静脈投与、経脾投与、経門脈投与などを糖尿病ラットの肝切除モデルで検討したところ、経脾投与が肝障害や遺伝子導入効率の面から最適であるとことが分かり、Journal of Surgical Research(2003,vol.110)に発表した。 さらに膵切除後の膵液瘻発生に関して、術後1日目の留置ドレーンからの廃液中アミラーゼ値が重要であることをHepato-gastroenterology(2003,vol.50)に発表した。 消化管間質系腫瘍の悪性度診断についてc-kit遺伝子のexon 11の遺伝子変異が重要であることをHepato-gastroenterology(2003,vol.50)に発表し、c-kit遺伝子に変異を持たない十二指腸のGISTがimatinib mesylateに対してsecondary resistanceを示したことをJ.Gastroenterology(2004 vol.39)に発表した。
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