研究概要 |
今までの免疫組織学的検討でlaminin-5 γ2 chainとMMP-7の発現の間に強い関連が認められたことから、この両者の関連をIn vitroで検討することが本研究の最終目的であるが、これに先立ち他の接着関連因子とlaminin-5 γ2 chainの発現との関連の有無を網羅的に検討した。50例のsm癌切除検体の薄切切片を用い、laminin-5 γ2 chainとβ-catenin,CD44 v6,MMP-7,MT1-MMR,MMP-2各々の発現の関連を検討した。その結果、MMP-7の発現のみが有意であった(p=0.014)。これは、今回の研究の作業仮説が正しいことを裏付けるものと考えられた。 しかし、MMP-7の陽性率は34%(17/50)に過ぎなかったことから、laminin-5 γ2 chainの発現がすべてMMP-7に依っているわけでもないと考えられた。そこで、Matrix metalloproteinases相互の関連性について検討したところ、1、MT1-MMPとMMP-2(癌細胞質)の発現に正の相関があること(p=0.0004)、2、MMP-7とMT1-MMPの発現に負の相関があること(p=0.01)、3、MMP-7とMMP-2(癌細胞質)の発現に負の相関があること(p=0.06)が判明した。これらの結果は、Matrix metalloproteinasesが相補的に腫瘍細胞の浸潤に関与していることを示唆しているのかも知れない。今後研究を展開していく上で、MMP-7だけでなくMT1-MMPやMMP-2も検討する必要があろう。 In vitroの研究については、福岡大学病理学教室鍋島一樹博士よりL10細胞の供与を受けcohort migration modelの再現を行っているところである。
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