急性壊死性膵炎において感染症が高頻度で合併する原因の一つとして、局所感染防御機構としての腹腔浸出好中球の機能低下が考えられる。しかし急性膵炎時の腹腔浸出好中球の機能について十分には解明されていない。特に(1)腹腔浸出好中球の貪食機能、CD16(Fc(R III;オプソニン化に関与)の発現、および活性酸素中間体産生(殺菌作用に関与)の経時的変化、(2)腹腔浸出好中球のapoptosisが好中球機能におよぼす影響、(3)腹腔浸出好中球のtumor necrosis factor receptorの発現の検討が行われていない。本研究は、急性膵炎における腹腔浸出好中球機能の動態をを明らかにすることを目的とした。ICRマウスを用い、caerulein 50μg/kg体重を1時間毎に7または13回皮下投与し急性浮腫性または壊死性膵炎を作成した。1〜72時間後に犠牲解剖し、末梢血、腹腔浸出液、膵組織を採取した。腹腔浸出細胞中および末梢血中好中球の貪食機能、CD16発現、および活性酸素中間体産生、apoptosis、TNFR I/TNFR II発現を経時的に検討した。また膵、肝、脾、肺、腸間膜リンパ節、腹水、血液の細菌培養を行い、bacterial translocationも検討した。壊死性膵炎では浮腫性膵炎と比べ、腹腔浸出好中球のaptoptosis亢進、CD16発現低下、TNFR I/TNFR II比上昇、貪食機能低下を認めた。また壊死性膵炎では浮腫性膵炎と比べbacterial translocationが高頻度にみられた。さらにN-formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine(fMLP)の刺激により、腹腔浸出好中球のtyrosineリン酸化とERK1/2賦活化が亢進することを確認した。
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