1.遺伝子発現プロフィルの解析 DNAチップを用いた遺伝子発現の検討を癌と正常組織でのペアリングによるクラスター解析で行ったところ、予後に一致した2群に発現パターンが分類された。予後不良の群ではE2-EPFが増加していた。 2.ウエスタンブロット 作成した3種類と市販の抗E2-EPF抗体を用いて食道癌、KYSE50のE2-EPF蛋白の分析を行った。合成ペプチドで作成した抗体(それぞれJ8、J9)と市販の抗体(ab4504 abcam)を使用したところ、特異的なバンドが認められた。市販の抗体のab4504では、培養細胞(KYSE50)で24kDのバンドを認めたが食道癌組織では認めず、約48kDのバンドが認識された。作成した抗体J8では、食道癌、KYSE50で約48kDのバンドが認められた。 3.免疫組織化学的検討 食道扁平上皮癌101例のホルマリン固定、パラフィン包埋切片を使用し、各症例の癌組織、異形成組織、正常組織に対し抗E2-EPF抗体(AP2120b ABGENT)を用いた免疫組織染色を行い、臨床病理学的因子、予後について検討した。食道癌、正常粘膜にE2-EPFの発現が認められた。特にE2-EPFは核に強い染色性が認められた。発現強度と臨床病理学的因子、予後について検討を行ったがどの因子についても有意な相関は認められなかった。 4.RNAiによるE2-EPF蛋白質発現抑制 siRNAの導入条件の設定のために、FITC標識オリゴdsRNAを用いた導入実験を行ったが、取り込み率が30%程度のため十分な発現抑制が得られなかった。このためsiRNA導入後、添加から48-60時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロットにより評価も行ったが、発現抑制(ノックダウン)の効果は十分ではなかった。現在条件設定を変えながら再評価を行っている。
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