研究概要 |
最近炎症性腸疾患(IBD)においてもgenome-wide gene expression analysisが行われるようになってきているが、潰瘍性大腸炎(UC)の病因については未だ明らかにされていない。そこで今回われわれはUCの病因や再発、再燃因子を遺伝子学的、病理学的に検索した。重症、難治潰瘍性大腸炎の手術切除症例の大腸組織を採取し、そのサンプルからm-RNAを抽出、gene chip(HG-U95Av2)にてハイブリダイゼーションを行った。チップの情報,データの処理、解析はAffymetrix software(GeneChip 3.1)にて行い、gene expressionを検討し、正常大腸組織と比較検討した。その結果UC症例ではosteopontin(OPN)のm-RNA発現が正常大腸に比し著しく強度であり、解析されたgene中、最も強かった。そこでOPNの抗体を使用し、UCやCrohn病(大腸切除例)、大腸憩室炎患者大腸組織、大腸癌患者正常大腸組織の免疫染色を行い、比較検討した。各群とも上皮ではOPNの発現が同等に強く認められたが、粘膜下層や奨膜下層においてOPN抗体の発現頻度を検討した結果、UC群ではCrohn病群や憩室炎群に比較し有意にOPNの発現頻度が高率であった。また、細胞マーカーを用いた形態学的検討からマクロファージや線維芽細胞がOPNの発現に強く関連していると考えられた。以上より、UCの炎症の再燃、さらに病因にOPNが密接に関係している可能性が示唆された。本内容についてはJ Gastroenterology vol.40,no.4に掲載予定である。
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