研究概要 |
肝細胞の複製過程におけるエネルギー産生のためにはミトコンドリアにおける脂肪酸のβ酸化が重要であるが、ミトコンドリアへの脂肪酸の輸送を触媒する酵素であるcarnitine palmitoyl transferase-1(CPT-1)の遺伝子を制御しているのはperoxisome proliferators-activated receptorα(PPAR-α)である。PPAR-αは、ステロイド受容体スーパーファミリーに属する核内受容体で、肝に最も多く分布している。PPAR-αは、肝細胞における脂質代謝経路の多くの酵素を転写レベルでの調節を行っていることが知られているが、近年脂質代謝のみならず糖代謝、アミノ酸代謝を含めた極めて多岐にわたる代謝調節を司っていることが明らかになってきている。一方、癌細胞では解糖系が亢進していることが明らかにされている。したがって、エネルギー代謝系において再生肝と肝細胞癌は異なる調節機構が働いていることが予想される。平成15年度においては、肝切除術時に採取した肝細胞癌組織におけるCyclineD1,PPAR-α,CPT-1,GAPDHのmRNAの発現量をRT-PCR法を用いて定量した。そして平成16年度は、再生肝におけるこれら遺伝子の発現量を調べるために、70%の肝切除ラットを作成し術後1日目と3日目に残肝組織を採取してmRNAの発現量をRT-PCR法を用いて行った。
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