研究概要 |
1)食道癌の多発のrisk factorの検討:食道内にはしばしば癌多発が認められる。そのrisk factorを明らかにする目的で、食道癌114例の切除標本を全割し、食道癌の数と喫煙、飲酒、家族歴を調べた。また、良性疾患症例228例を対照群とした。Heavy smoker、大酒家の頻度は対照群では各14,10%に対し、癌単発例では28%,30%、2病巣の症例では36%,55%、3病巣以上では67%,60%と食道癌の数が多いほどheavy smoker、大酒家の頻度が高かった。一方、家族に食道癌、頭頸部癌または肺癌の患者を有する頻度は、対照群7%、癌単発群10%、2病巣の症例18%、3病巣以上27%であった。以上より、過度の喫煙、飲酒のみならず、食道癌、頭頸部癌または肺癌の家族歴が食道癌の多発のrisk factorと考えられた。(Morita et al. J Surg Oncol 2003) 2)食道癌症例における食道上皮のアルデヒド脱水素酵素-2の発現に関する研究:日本人の半数に認められるアルデヒド脱水素酵素-2(ALDH2)の欠損は飲酒による顔面紅潮(flushing)に関わり、食道癌の危険因子と報告されている。食道癌51例の切除標本にてALDH2を免疫組織化学染色し、食道上皮におけるALDH2の発現を検討したところ、43例(84%)に発現を認めた。飲酒指数をみると、無、低、高発現群における大酒家の割合は各0,36,90%であった。さらにflushing陽性例は無または低発現18例中13例(72%)に対し、高発現18例中3例(17%)のみであった。したがって、食道上皮のALDH2発現は遺伝子型と関係し、アルコール暴露により局所に誘導されると考えられた。(第103回日本外科学会定期学術集会、第58回日本消化器外科学会総会、2003)
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