研究概要 |
(1)食道癌症例における飲酒・喫煙歴と癌関連遺伝子タンパクの発現に関する研究:食道癌症例55例において癌抑制遺伝子p53,Fhit,p63,delta Np63,DNA修復遺伝子p53R2の発現を免疫組織学的染色にて調べ、喫煙指数・飲酒指数(DI:合/日×年)との相関、癌多発との関連につき検討した。癌部のFhit減弱例は発現例に対し飲酒、喫煙量がともに多かった。さらに、食道上皮のFhit発現例と減弱例の平均DIは各々96、182であった(P<0.01)。他のタンパクの発現の有無による喫煙、飲酒歴の差は認めなかった。一方、食道内癌多発は、正常上皮のFHIT発現例13%に対し、減弱例では44%と有意に高く(P<0.05)、多発癌で発現の減弱した例は全例、大酒家であった。以上より、飲酒による食道癌の発癌、さらには癌多発の一因として、食道上皮におけるFhitの発現減弱が関与している可能性が示唆された。(第57回日本胸部外科学会定期学術集会、2004) (2)アルデヒド脱水素酵素-2(ALDH2)の体内分布とアルコール代謝酵素に与える影響に関する研究:ALDH2はアルコール代謝に重要でその欠損は食道癌の危険因子である。我々は、wild mouseおよびALDH2-knockout mouseにおけるALDH2および他のアルコール代謝酵素の分布を調べた。その結果、wild mouseではALDH2は肝、肺、食道、胃、大腸等に分布し、ヒトと同様の分布を示した。一方、ALDH2-knockout mouseでは、CYP2E1が肝臓で増加していた。以上より、ALDH2-knockout mouseはアルコール代謝異常による疾病の病態解明の有用な動物モデルと考えられ、さらにALDH2はCYP2E1の発現を抑制している可能性が示唆された。(Frontiers in Bioscience,2005)
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