1.プロテオーム解析により膵臓癌に特異的に発現する癌抗原の同定を行い、腫瘍マーカーとしての有用性、特異的癌免疫療法のターゲット分子としての可能性について検討するために、2種類の膵臓癌細胞株(Panc-1およびMIA paca-2)より得られた細胞抽出液を二次元電気泳動にて分離したのち、健常者および膵臓癌患者各5人ずつの血清を用いてWestern blottingを行い、膵臓癌患者の血清とのみ特異的に反応すると考えられる数個のタンパク質スポットを同定した。現在、同定したタンパク質スポットより数種類のアミノ酸配列が得られつつあるが、これらの実験結果の再現性を検討しつつ、これら同定したタンパク質が膵臓癌に特異的に発現するかどうかを膵臓癌細胞株、膵臓癌摘出標本でのRNA発現(Northern blottingおよびRT-PCR法)により検討中である。 2.胃癌患者の腫瘍浸潤リンパ球よりHLA-A33拘束性の細胞傷害性T細胞(CTL)株を樹立したのち、癌細胞由来のcDNAライブラリーを用いた発現スクリーニング法によりこのCTL株の認識する癌抗原タンパク質IEX-1を同定した。さらに、CTL株あるいは癌患者由来リンパ球に認識される3種類のHLA-A33拘束性抗原エピトープをこのタンパク質内に同定した。なお、この抗原タンパク質は抗アポトーシス作用を持ち、各種癌細胞に発現増強していたことから、特異的癌免疫療法のターゲット分子となるものと期待された。
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