研究課題/領域番号 |
15591463
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井口 篤志 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90222851)
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研究分担者 |
田林 晄一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90142942)
小田 克彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (60323002)
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キーワード | Na(+) / H(+)交換抑制剤 / 心停止ドナー / 右心機能 / 再灌流障害 / 心臓移植 / 心保存 / 薬剤デリバリー法 / 圧-用量関係 |
研究概要 |
今年度、Na(+)/H(+)交換抑制剤(NHEI)の副作用と、NHEIの投与量、投与方法の変更の問題について心臓移植後の左心室、および右心室の機能回復に関して検討した。心保存液を用いた長時間の心保存で、再灌流障害を抑制する目的で使用するNHEIを使用した場合、中枢神経系などへの副作用が懸念されるが、心臓のみで目的とする濃度を保つことができれば他の臓器への障害がなく、長時間、心保存後の再灌流障害を抑制することができる。このことを移植心の左室機能、右室機能の収縮能の指標である圧-容量関係から検討した。これまで報告してきたブタ心停止ドナーからの心臓移植実験で、再灌流後10分間に1/10の投与量のNHEIを投与し、術後の右心機能を測定した。この結果、NHEIを投与しない場合に比較して良好な右心機能が得られたが、NHEI 2mg/kgを再灌流時に全身投与した場合よりは不良であった。そこで、全身投与の1/5の量のNHEIを再灌流後30分間かけて投与した。このような投与方法でNHEIを心臓でのみ目的とした濃度を保つように使用した場合、移植心は右室の収縮能を増強することにより心拍出量を維持した。移植手術後には肺血管抵抗が上昇し後負荷は増大していたが、右室容積は有意には増加していなかった。肺血管抵抗の上昇に対して、NHEIを使用しない群では右室収縮能が低下し、右室はFrank-Starling mechanismのみによって機能し、その結果として心拍出量を保つために右室容積は著しく拡張した。NHEIを再灌流直後に選択的に心臓に30分間投与した場合、右室は収縮能を増強させることにより右室後負荷の上昇に対応し、心拍出量を維持することができることが示された。
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