研究概要 |
羊冠動脈バイパス実験では、実験コントロールとなる異種血(ヒトフィブリノーゲン使用)で作製した3mm人工血管を移植したところ、移植3週間前後で閉塞する傾向がみられた。そこで異種血、自己血で作製した小口径人工血管の特性を再評価するために兎頚動脈バイパス実験を行なうことにした。<方法>異種血および自己血で作製したフィブリンコート人工血管(内径2mm,長さ2cm)を家兎30羽の両側頚動脈にそれぞれ置換移植し、移植後1、3、7、14、30、60日に人工血管を摘出して以下の項目について検討した。(1)開存性、(2)抗血栓性(血小板シンチレーションにて人工血管付着血小板数を測定)、(3)病理組織学的観察。<結果>観察期間中、自己血群(n=30)すべて開存していたが、異種血群(n=30)は移植後3日に2本、移植後14日に1本閉塞していた。人工血管付着血小板数は移植後1日、3日ではいずれの群も極めて低値であったが、移植後10日から14日にかけて急激に増加した。しかし総じて自己血群が異種血群より有意に低値であった。組織学的にはコートフィブリンは移植後10日から14日にかけて完全に分解吸収され、フィブリン膜に置き換わった。<考察>フィブリンコート人工血管の抗血栓性は移植後初期では極めて優れていたが、コートフィブリンの吸収・置換時期に悪化しており、これが羊冠動脈バイパス実験での人工血管閉塞の原因となったものと推測された。また自己血で作製した人工血管のほうが開存性、抗血栓性ともに異種血より優れていた。以上の結果を踏まえて、今後はコートフィブリンの吸収・置換時期の抗血栓性を改善した上で、再度羊冠動脈バイパス実験に戻り、異種血人工血管に加え、自己血使用、さらにCD34抗体添加群について検討してゆく予定である。
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