アデノウイルスの増殖に関わるE1AおよびE1B遺伝子をテロメラーゼ構成成分の一つであり、その活性と相関するhTERT(human telomerase reverse transcriptase)プロモーターにより駆動することにより、癌細胞で特異的に増殖可能なアデノウイルス(Tumor-specific Replication-comptent Adenovirus : RAD)を構築した。また、オワンクラゲ由来の蛍光蛋白質であるGFP(Green Fluorescent Protein)をコードするGFP遺伝子を発現する非増殖型アデノウイルスベクター(Ad-GFP)を準備した。ヒト癌細胞にAd-GFP 0.1 multiplicity of infection(MOI)、TRAD 1.0 MOIで感染させると、24時間以内に蛍光顕微鏡下に顕著な緑色蛍光が観察された。一方、線維芽細胞などの正常細胞では、発色が認められなかった。したがって、Ad-GFP/TRAD共感染により癌細胞特異的にGFP発現を誘導することが可能である。次に、ヌードマウスの皮下にAd-GFP、TRADを8 x 10^6 plaque forming units(PFU)ずつ投与しても、GFP蛍光はみられなかった。しかし、ヌードマウスの皮下にSW620ヒト大腸腫瘍およびA549ヒト肺腫瘍を形成し、同量のAd-GFP/TRADを腫瘍内投与したところ、24時間以内にGFP蛍光が観察され、3-7日をピークに持続的なGFP発現が観察された。さらに、A549細胞をヌードマウスの胸腔内に投与して作成する胸膜播種モデルにおいて、Ad-GFP/TRADの胸腔内投与は肉眼的に確認できない微小播種結節を検出することができた。今後は、GFP蛍光を高感度にかつ肉眼的にマクロで検出するための高感度蛍光感知カメラ・システムを開発し、将来的な臨床応用の可能性について探る。
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