研究概要 |
癌のリンパ節微少転移をフローサイトメーター(FCM)で検出する方法(FDL法)の開発に関して、平成16年度は以下のような研究を行い、成果を得た。 1.FDL法の基礎的・技術的検討 1)CK/CEA/DNA三重染色の検討 CK/DNA二重染色にてリンパ節細胞中の0.001%の癌細胞を検出することに成功したH15年度の成果を礎に、H16年度はさらに高い特異度を求めてCK/CEA/DNA三重染色を検討した。肺腺癌細胞株ABC-1を用いた。その結果、適切な染色条件は以下の通りであった。分散細胞を70%エタノールで20分固定し、エタノールの除去後、抗体希釈液で1回遠沈洗浄する。沈さに抗体希釈液を800μl添加し、撹拌する。このうち400μlを陰性コントロールとする。400μl細胞液にFITC標識抗cK抗体(DAKO,F0859)を50μl、及び、PE標識抗CEA抗体(BD,551478)を50μl添加し、撹拌する。陰性対照には蛍光標識抗Ig抗体を使用する。遮光状態で室温、20分間反応させる。7-AAD(BD,559925)を50μl添加・撹拌したのち、遮光状態で室温10分間反応させ、FCM測定する。なお、短時間に結果を出す術中迅速診断が目的でない場合は、より長い固定時間、免疫染色後の洗浄、より長い7AAD染色時間が望ましい。 2.FDL法の臨床的有用性に関する検討 1)患者リンパ節での比較検討 術中迅速診断に提出された肺癌患者のリンパ節(#1,#3,#7,#9,#10)の残りを用いて、癌病理診断とFDL法とで比較した(CK/DNA二重染色法)。その結果、病理診断で転移のみられた2つのリンパ節はFMLでも陽性と判定された。一方、#10リンパ節は病理診断では転移なしであったが、FDL法では陽性となった。FDLの臨床的有用性が示唆された。 2)術中迅速診断のための技術的検討 FDL法の研究を進めるなかで明かとなった大きな課題はFCMの測定速度の問題であった。文献的検討、ならびにメーカー技術者との検討の結果、市販のFCMは秒速1万個が限度であり、1個のリンパ節細胞を1台のFCMで全て測定するのに1日かかることが判明した。より高速に測定できる機種の開発が望まれる。
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