研究概要 |
1.肺癌細胞株におけるMIFの発現の有無の検索: ヒト由来の肺癌細胞株(扁平上皮癌株QG56、腺癌株PC-9、小細胞癌株QG90)よりRNAを抽出し、Cdnaを調整後、下記のOligoprimerを用いてRT-PCRを行い、MIFの遺伝子発現を確認した。 2.臨床検体におけるMIFの発現の有無の検索: 59症例の切除肺より採取し、凍結保存した非癌部肺、腫瘍組織についてRNAを抽出し、real time monitoring PCR法にてMIFのRNA量(/0.08μg)を定量したところ、癌部は非癌部より有意に高かった。特に喫煙者の肺癌組織で有意に高く、喫煙とMIF発現の相関が示唆された。 3.MIFの発現と喫煙について: 上記実験結果より、喫煙関連化学物質がMIFの発現に関連している可能性が示唆された為、肺癌細胞株A549の培養液にtobacco smokeあるいはベンツピレンを添加したところ、培養後48時間、14週間、28週間においてA549にMIF蛋白の発現が認められた。 4.MIFの発現阻止実験: MIFの遺伝子発現をcomputer解析にデザインした2種類のMIF-siRNAをlipofection法にて各種肺癌細胞株への導入を行ったところ、明らかな阻止効果が認められなかった。 5.ベンツピレン刺激により誘導される遺伝子群の網羅的解析: 肺腺癌細胞株A549をベンツピレン(1μM)添加培養液にて24週間培養したのち、マイクロアレイ法にて54,675遺伝子の発現を解析したところ、54,675遺伝子の発現がコントロール(DMSO添加培地)の2倍または1/2量に変化していた。その中で、上皮-間葉転換機構に関わる遺伝子群(migration stimulating factor,plasminogen activator-inhibitor-1、transforming growth factor betaなど)が際立って高く発現していた。MIFの発現変化は認められなかった。 結論:以上より、非小細胞肺癌組織における炎症性サイトカインの発現は喫煙と相関しており、免疫系や増殖・分化に関わる細胞学的変化の中の一つとして捉えられる可能性が示唆された。
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