研究概要 |
ブタ左心室にbase-apex、septal-lateralの2方向、2対の超音波クリスタルを植え込み、2つのdimmensionからSimpsonの式により、左室容積の算出をし、同時にカテ先マノメーターにて左室内圧を測定し、on-lineにて左心室の圧容積関係(PVR)を描出した。また関心領域(左前下行枝領域)の面積計算のために、左室前壁に直交する2対の超音波クリスタルを植え込み、局所壁張力を左室容積からラプラスの法則にて求め、関心領域の局所壁張力-局所面積関係(TAR)をon-lineにて描出した。左前下行枝をカットダウンしカニューレを挿入、直ちに100ml/minの流量で血液をポンプで送り、冠灌流を再開した。この時点でのPVRとTARをコントロールとし、冠灌流の流量を60,40,20,10,0ml/minと変化させ、それぞれの流量でのPVRとTARを求めた。5例の心臓にてデータ採取が可能であった。5例のすべての心臓で、冠灌流量40ml/minにおいてはPVR、TAR共にコントロールと比し変化なかったが、冠灌流量を20ml/minに減少させると、PVRはコントロールと比し、変化が無いもののTARは座標上を右方に偏移し、TARにおけるループで囲まれる面積(局所仕事量)が顕著に低下した。このことは、冠灌流の流量の限界点を20-40ml/minとして、それより流量が低下すれば、左室全体としての血行動態には表れないが、その冠動脈の支配領域では、局所心機能が低下していることを示している。このことから心拍動下冠動脈バイパス術の吻合時の冠動脈末梢に対する冠灌流量は最低でも40ml/minを維持する必要があることがわかってきた。
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