研究概要 |
平成16年度は前年度に引き続き,本研究の基盤となる循環シミュレータの整備拡張とそれを応用した人工臓器の性能評価および関連するセンサーの開発を行った.以下に項目に分けて記す. 1.循環シミュレータの整備拡張 右心系も模擬可能なDCモータ駆動の拍動流ポンプを中心とした循環シミュレータの整備改良を行った.今年度はシミュレータの構成要素となるコンプライアンスタンクを新たに製作した.従来のコンプライアンスタンクは弾性機構として空気室を用いていたが温度による弾性の変化が生じるため今回は弾性機構としてバネを採用した.その結果,肺循環系のインピーダンスも生体に近似され,右心系補助循環のシミュレーションも精度向上が図れたものと考える.この成果は平成16年4月に開催された日本医工学治療学会の第20回学術大会で「模擬循環回路における右心補助用ロータリーポンプの基礎的検討」として発表した. 2.ステントレス生体弁の性能評価 ステントレス生体弁は従来の生体弁と比較して,その耐久性や水力学特性から優位性が指摘されてきている.本年度は昨年度に引き続き循環シミュレータを用いて,特に生体弁の周囲の弾性特性と同弁の開放特性への影響を検討した.ステントレス生体弁としてはFreestyle^<【○!R】>弁(φ29mm)を試験対象とした.この結果から同弁の埋め込みの際にその周囲の力学的特性が水力学的特性に影響することが示唆された.この成果は"Effect of the elastic conditions around a stentless valvular bioprosthesis on opening bebavior"の題目でJ Artif Organs, Vol.7-3(2004)に論文として掲載された. 3.新規的な圧力センサーの開発 人工臓器内への埋め込みや血圧測定を目的とした新しい構造の圧力センサーを開発した.従来用いられていた平板リニアアレイ圧力センサーと異なり溝付きリニアアレイ圧力センサーとすることで,感度とクロストークの大幅な改善が予測される.この圧センサーは「アレイ型接触圧センサ」という名称で特許出願(裏面参照)を行った.
|