研究概要 |
平成17年度は前年度に引き続き,本研究の基盤となる循環シミュレータを応用した人工臓器の性能評価および関連するセンサーの開発,さらに医療データベースシステムの構築を試みた. 1.Y字型人工血管に関する基礎的検討 動物実験結果から大腿動脈のインピーダンスの範囲を想定しシミュレータを構築して人工血管の内径と血行動態の関係を検討した.結果としては内径を8mmから12mmに拡張することにより同一の圧力条件下において約0.2L/minの流量が増加した.この結果より従来のY字型人工血管と比較して新しい人工血管の血行動態への優位性が示唆され,"Characteristics of a newly designed aortofemoral prosthetic Y graft under pulsatile flow conditions"の題目で平成18年のヨーロッパ人工臓器学会で発表の予定である. 2.新規的な圧力センサーの開発 人工臓器内への埋め込みや血圧測定を目的とした新しい構造の圧力センサーを開発している.溝付きリニアアレイ圧力センサーとすることで,感度とクロストークの大幅な改善が予測される.本年度はフォトエッチング法により実際に試作したセンサーに荷重を負荷して出力電圧を測定した.その結果,試作センサーは十分な実用性が認められ,「人工臓器組み込みを目的とした小型圧力センサーの開発」(人工臓器, vol.34, No.2, 2005, S-111)として発表した. 3.医療データベースシステムの構築 人工弁をはじめとする人工臓器やその他の診断治療の評価を目的とするデータベースシステムの構築を試みた.初めての応用としてはPWV(動脈内脈波伝播速度)と生命予後について心臓カテーテル検査を受けた288名を解析対象とした.その結果PWVは5%の有意水準には達しなかった(p値=0.71)ものの,PWVの増大にともない死亡の危険度が増加する傾向が認められた.
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