68例の患者の3次元CTから現有設置されている画像構築システムを用いて胸部大動脈瘤像をコンピューター上に描写し、それらを血管の屈曲形状や分枝の位置、病変部の形状を考慮して10パターンの形状に絞り込み、血管内挿型人工血管(ステントグラフト)をそれらに合わせてコンピューター上で設計し、同様に人工血管の形状もパターン化したうえで実際にそれらの人工血管を作成した。パターン化されたそれぞれの血管形状を光硬化樹脂モデルとして実体化し、作成した人工血管を実体モデル内に留置し、またフロイド液を用いた水流回路を用いてそのフィッティング状態を観察しデーターを蓄積した。データーの蓄積にはフィッティングの良し悪しをポイント化することで明確化し、プラスポイントとなるものは設計基準に組み入れ、マイナスポイントとなるものは設計基準から除外することで設計の精度を向上させた。 これらのデーターから血管形状が既成のパターンに当てはまるものであれば、充分な精度を持った人工血管の設計が患者のCTをもとにコンピューター上で行うことが可能となった。今年度末に施行した最終的な水流実験では、屈曲への追従性、固定性、密着性が極めて優れた人工血管の作成が本シュミレーショシシステムを用いることで完全に行えるようになった。臨床においても従来の診断法に加えてこのシステムを中心に人工血管の設計および作成を行い、98%以上の初期成功率を得た。今後のさらなるデーターの蓄積に伴い、パターンの見直しや追加、また作成技術を改善することでその精度をさらに向上させることが可能である。
|