研究概要 |
遊離神経切断除神経グラフトの基礎的研究(研究I)の結果、遊離神経切断除神経グラフトは電気的刺激応答性や収縮機能の減弱は不回避であるが、組織学的にviablityの維持が可能であったことから、電気駆動以外に遊離グラフトを用いた形成手術としての応用の可能性妥当性が示唆された。しかし動的心筋形動、心機能の補助を目的としたグラフト使用に際しては除神経グラフトの収縮機能が十分でなくさらに検討が必要であった。これらの結果にもとずき、チアノーゼ性心疾患の新しい手術術式の確立および臨床応用を目指した有茎広背筋グラフトによる心機能補助の実験的研究を行った。本研究(研究II)では筋収縮を先天性心奇形の動的心室形成術へ応用することに着目し、単心室などの複雑心奇形モデルにおいて移植骨格筋グラフト駆動による機能的再建術、すなわち胸腔内に作成したskeletal muscle ventricle(SMV)あるいは骨格筋導管(skeletal muscle conduit)によるDynamic Fontan型様式による右心バイパス手術の可能性を検討した。実験の結果、電気的トレーニングにより骨格筋耐疲労特性は著しく向上し、電気的トレーニング後の骨格筋ポンプは右心系補助に十分な収縮力を有することが示された。さらにSkeletal muscle ventricle(SMV)), dynamic Fontanを用いた右心バイパスシステム(自己骨格筋グラフトによるdynamic Fontan)は、生理的CVPの条件下に高肺血管抵抗下でも右室切除前と変わらぬ肺血流量を維持し得た。自己骨格筋グラフトによるdynamic Fontanは、単心室症に対する新しい治療法となる可能性が示唆された。
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