研究概要 |
乳幼児体外循環中の潅流因子としてヘマトクリット値、pH、体温、体外循環時間、酸素分圧、潅流量、潅流圧などが脳循環生理に大きな影響を及ぼすと考えられている。本研究の目的は、無輸血体外循環の安全限界を確立するために、以下に記す3項目を科学的に探求した. 1)NIRSを用いて潅流因子が脳酸素化に与える影響 2)脳組織レベルでの虚血変化に強く影響を与えている因子の検討 虚血変化を予測防止するためのNIRSデータを検討し無輸血体外循環の安全限界の検討動物実験により体外循環中のヘマトクリット値(30,20,10%)が脳組織代謝に及ぼす影響を,NIRSを用いて体外循環中の脳組織内酸素化率の変化と脳病理組織変化から比較検討した.実験動物として体重8-10kgの豚を用いた. 麻酔は臨床の心臓手術に準じてフェンタニル、ミダゾラム、パンクロニウムにておこなった。右開胸にて心臓に到達し、大動脈送血、右房脱血にて体外循環を確立した。無輸血体外循環の安全性の確立が主目的であるため、体外循環中の潅流因子として特にヘマトクリット値に着目し10%、20%、30%の3群にわけて実験をおこなった。他の条件は実際の臨床に則してpH strategy、28℃の中等度低体温、潅流量100ml/kg/min、体外循環時間120分とした。実験終了後、体外循環から離脱しカニューレを抜去し閉創をおこない、その後循環呼吸管理をおこない、人工呼吸器からの離脱をはかった。1週間経過観察をおこない、その間に毎日、実験内容を知らされていない獣医による行動評価をおこなった。行動評価にはNeurological Deficit Score (NDS)およびOverall Performance Categories (OPC)を用いた。また1週間目に動物を犠牲死せしめ脳組織の顕微鏡的観察をおこなった。病理組織的診断は実験内容を知らされていない病理医がおこない、細胞レベルの虚血の有無を点数化し実験のendpointとした。その結果、各群間の検討をおこない、無輸血体外循環の安全限界を検討する。さらにNIRSデータと病理組織的診断との間の関係を検討し、安全のための指標を確立する。
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