研究概要 |
(目的)我々はinsulin-like-growth factor-1(IGF-1)がphosphatidylinositol-3 kinase(PI3K)を介してこれらの細胞の接着、増殖および分化を調節していることを明らかにした。今回、ラットの心筋梗塞モデルを用いてIGF-1の骨髄間葉系幹細胞(BMMSC)移植における有用性と安全性について検討した。 (方法)心筋梗塞作製1ヵ月後のラットの梗塞辺縁にGreen fluorescence protein発現ラットから継代培養したBMMSC 5×10^6個を局所注入した。移植後のBMMSCの局在と表現型の変化は心筋凍結切片を経時的に心筋細胞マーカーであるα-actinin,血管内皮のマーカーであるvon willbrand factor、そしてアポトーシスの評価にTunel法を用いた。心機能は心エコーを用いて評価した。骨形成の確認としてvon Kossa染色を用いた。 (結果)IGF-1+BMMSC群では1日後および一ヵ月後の細胞生着数が多く存在し、6時間後のアポトーシスは有意に少なかった。また移植細胞は1ヵ月後も分化せず未分化な形態を維持していた。心筋凍結切片の免疫染色ではIGF-1使用群でホスト由来の心筋細胞と血管の新生が有意に多く認められ、一ヵ月後のホスト心筋梗塞辺縁心筋細胞のアポトーシスは少なく、エコー上でも左室駆出率の改善とLVIDdの拡大抑制が有意に認められた。IGF-1+LY294002(PI3K阻害薬)+BMMSC群ではIGF-1+BMMSC群の効果をすべて欠いていた。Von Kossa染色は陰性であり骨形成は認めなかった。(結論)IGF-1はPI3Kを介して心筋梗塞部位に局所注入したBMMSCの生着を促進し、ホスト由来の心筋細胞、血管の新生といったBMMSC移植の効果を改善した。
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