研究課題
基盤研究(C)
我々がMRL/lprマウスから樹立した、糸球体腎炎誘発能を有する抗内在性レトロウイルスgp70自己抗体クローンのうち、12H5.1抗体(IgG3)を精製して、同系正常(MRL/+×BA LB/c)F_1マウスに連続的に静脈内接種した。約6mgの精製抗体を12回に分けて連日投与し、全身器官の病理組織学的解析を行ったところ、約45%の個体で、最終投与2日後をピークとして、肺動脈系の肉芽腫性血管炎発症を認めた。肉芽腫性病変は小動脈に多発する場合と、太い動脈の壁を部分的に破壊する場合とが見られた。また、病変部には好中球とマクロファージが多数浸潤しており、PAS染色で血管壁中膜の破壊が確認された。この病変形成が免疫複合体を介するものであるか、血管壁構成細胞の直接傷害によるものであるかを解析するため、抗体非投与状態での血管壁における内在性レトロウイルスgp70発現を免疫組織化学的に解析した。その結果、肺及び腎臓の動脈壁には、内在性レトロウイルスのgp70が構成的に発現していることが明らかとなった。また、血清中のgp70濃度が高い系統と低い系統を比較すると、これが高い系統で肉芽腫性血管炎の発症頻度が高い傾向があった。そこで、Fcレセプター遺伝子または補体系遺伝子を欠損する、C57BL/6系のノックアウトマウスと、血清gp70発現量の高いMRL/+マウスとを交配し、得られたF_2マウスに上記の病原性抗gp70自己抗体を静脈注射して、血管炎の発生頻度を検討した。その結果、この血管炎の発症に流血中の免疫複合体が関与する可能性が示された。
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