<研究実績の概要> 平成15年度の研究計画で使用した実験モデルを用い、摘出心に対するSialyl Lewis-X ologosaccharide (SLe-X)虚血再灌流障害抑制効果を心筋細胞のみならず血管内皮細胞の再灌流障害抑制効果より評価し、本薬剤の効果発現メカニズムを検証した。 1.実験動物:Wistarラット20匹を使用する。 2.実験群:Control群;通常の常温血液心筋保護液心停止再灌流を行った群(n=10)、SLe-X群;心筋保護液にSLe-X(60μg/ml)添加し、心停止再灌流を行った群(n=10) 3.実験方法:サポートラットを用いた血液交叉体外循環モデルにドナーラットからの摘出心を装着し、上記心筋保護液を用い60分間の心停止、120分の再灌流を行った。 4.測定項目 (1)心機能:左室内バルーンより左室収縮圧、左室拡張末期圧、+dp/dt、-dp/dtを測定した。 (2)心筋代謝:動脈血および冠静脈血を採取し、CK-MB湧出量を測定した。単位時間あたりの冠静脈血液量を測定することで冠循環流量を測定した。 (3)再灌流障害の評価:アセチルコリン負荷によるnitric oxide (NO)産生能、心筋内ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を測定し、血管内皮細胞でのP-selectin、E-selectin発現を免疫組織染色で評価する。 5.結果:SLe-X群ではControl群と比較し心機能は良好に保たれ、CK-MB湧出量は低値であった。SLe-X群では再灌流後の冠循環流量、NO産生能は保たれ、心筋内MPO活性は低値で、血管内皮細胞でのP-selectin、E-selectinの発現は抑制されていた。SLe-Xによる再灌流障害抑制効果は接着因子発現抑制による白血球の血管内皮への接着および心筋内浸潤抑制を介している可能性が示唆された。
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