研究概要 |
現在までに我々はラットの局所脳虚血モデルを用いてLPSによる虚血耐性が獲得されることを明らかにしている。またこの機構にスフィンゴミエリンサイクル、特にセラミドが関与することを実証している。このように、これまでの実験結果の蓄積過程でLPSによりセラミド合成の場でもある小胞体にストレスがかかることが示唆され、非致死的なLPS投与による耐性誘導過程で小胞体が果たしている役割が大きいのではないか?と推測するに至った。 今回の研究では、局所の脳虚血モデルで得てきたこれらの知見と経験を、より系が単純でシンプルな海馬CA1ニューロン群の細胞死の保護という方向に視点を変えLPSによる虚血耐性現象と小胞体ストレスの関連を明らかにし虚血からの神経細胞保護に向けた経路の解明に迫りたいと考えたが、小胞体ストレスのインデューサー<ツニカマイシン)を1μg/μl,12μg(60μg/kg),24μg(120μg/kg)の容量でスナネズミに経静脈的および、経脳室にて投与したところ、毒性が強いためかすべて死亡した。従って、従来のLPS前処置によるラット局所脳虚血モデルを用いて、小胞体ストレス関連蛋白であるGrp78,Grp94の発現をウェスタンブロット法により調べた。 生理食塩水投与のコントロール群と比較して、LPS投与群では投与後48時間から72時間後の丁度、虚血耐性の誘導される期間に一致してGrp94の発現が亢進していた。またその後、局所脳虚血の侵襲後6時間後では一旦発現が減少するものの、24時間後には著しい発現亢進を示した。しかしながら、Grp78に関しては、発現の亢進が見られるものの、コントロール群との差は明らかとはなっていない。今年度は小胞体特異的転写因子IRE1、PERK(PKR-like endoplasmic reticulum kinase)、ATF6などのカイネティックスをmRNA及びタンパク質レベルで明らかにすることを考えている。またラットを使った、通常の虚血耐性下での海馬CA1の小胞体特異的転写因子を調べていく予定である。
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