研究概要 |
1236施設を対象として施行した「わが国における頭蓋内硬膜動静脈瘻の疫学調査.第一次調査(最近5年間の症例数)」の結果、338施設より1815例の症例が登録された.発生部位は海綿静脈洞部(CS)が826例(全体の46%)、横静脈洞部(TSS)514例(28%)、脊髄105例(5.8%)、上矢状静脈洞部(SSS)97例(5.3%)、前頭蓋底部(ACB)79例(4.3%)、頭蓋脊椎移行部(CCJ)60例(3.3%)、テント部58例(3.2%)、その他76例(4.2%)であった。これより本疾患の検出率(発生率)は年間0.29/10万人と算出された.CSとTSSの頻度は欧米とは逆であった.地域別には、北海道・東北地方が年間0.40症例、関東甲信越0.19、中部0.35、近畿0.34、中国・四国0.31、九州・沖繩0.30であった.次に、一次調査の回答112施設を対象に登録症例の詳細な二次調査を行った.68施設より1490例(1533病変)が収集された.男性628例、女性850例、平均62.7±12.7歳、発生部位は一次調査とほぼ同様の分布であった.性差が著明な部位はCS(女性80%)、対してACB、テント、SSS、直静脈洞(SS)、脊髄、CCJは男性がそれぞれ87%、80%、79%、73%、72%、68%であった.初発症状は結膜眼球/外眼筋症状65.2%、頭蓋内出血/静脈梗塞20.9%、耳鳴19.9%、脳圧亢進症状6.4%、脊髄症状5.7%、痙攣2.8%、水頭症0.4%、その他5.9%、無症状6.5%であった.出血/梗塞/脳圧亢進/痙攣の悪性症状を呈する病変はSSS、SS、下錐体静脈洞に多く、辺縁静脈洞、CS、condylar veinで低率であった.治療内容は血管内治療79%、外科手術13%、放射線療法3.4%、保存的療法11,1%で、外科手術の比率が高い(>30%)部位はACB、脊髄、円蓋部であった。血管写上の完全閉塞は59%、ほぼ完全閉塞16%、部分閉塞13%、転帰は完全回復が54%、改善16%、不変7%、悪化1.5%、死亡1.2%であった.治療結果の特徴として、テント周辺の病変は閉塞率も転帰も不良、脊髄病変では閉塞率が高い一方、転帰は不良であった.
|