研究概要 |
研究計画書に従い,平成15年度は以下の3つのテーマについて研究を行った. (1)Atypical teratoid/rhabdoid tumorにおけるEMA, SMAの発現とhSNF5/INI1遺伝子の変異解析 (2)髄芽腫における免疫組織学的および細胞遺伝学的異常とその臨床的意義 〜C-,N-mycおよびβ-,γ-カテニン,cyclin D1に着日して〜 (3)Atypical teratoid/rhabdoid tumorにおけるcyclin D1の発現とその意義 (1)は,小児悪性脳腫瘍の中で最も予後不良のatypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)に関する症例研究で,AT/RTが強く疑われたが確定に難渋した自験1例において免疫組織学的検索を行うとともに,診断的意義の高いhSNF5/INI1遺伝子の変異を解析した報告である.その結果,hSNF5/INI1遺伝子の変異,EMA, SMA陽性所見が確認されAT/RTと診断し得た.国際医学雑誌J Neuro-Oncolに発表した. (2)は,小児悪性脳腫瘍の代表である髄芽腫においてWntシグナル伝達系の分子を中心に,免疫組織学,分子生物学を用いて解析したものである.当教室の経験症例24例の標本,臨床情報等を収集,検討した.得られた結果の要約は,1)γ-カテニンの陽性所見は,予後良好と相関した(p=0.003).2)cyclin D1の過剰発現は予後不良の傾向があった(p=0.057).3)c-myc, N-mycの遺伝子増幅を各々1例に認めた.組織学的には両者共に予後不良のlarge cell/anaplastic typeであった.以上の結果はいずれも臨床応用可能な知見であり,現在,国際医学雑誌に投稿中である. (3)は,3歳以下の悪性脳腫瘍中にAT/RTが誤診されている可能性を検討するため,(1)で得られた,AT/RTの診断にEMA, SMA陽性所見とhSNF5/INI1変異が有用,との知見を応用し自験16例を解析したものである.得られた結果の要約は,1)5例(31%)がAT/RTと診断された.2)Cyclin D1の過剰発現はhSNF5/INI1遺伝子の不活化と相関した.以上から,AT/RTにおいてhSNF5/INI1の変異解析はcyclin D1の免疫染色で代用可能で,cyclin D1の過剰発現はEMA, SMA陽性所見と並んで臨床的意義が高い.本内容は,現在,国際医学雑誌に投稿中である.
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