1.動物の実験的動脈瘤に対し、血管内治療手法を用いて瘤壁に影響を及ぼす塞栓物質を用いたブースター的治療を加えた。分子生物学的アプローチに先駆け、瘤の腔内にキチンを脱アセチル化して作られたキトサンにて瘤内を充填し、これに紫外光照射を行うことにより瘤内の硬化を計る方法を開発した。ウサギの総頸動脈に外頸静脈片を側々吻合し、実験動脈瘤を作成し、予め光硬化してゲル化したキトサンを直接血管外から実験動脈瘤内に挿入した。血管内留置による全身合併症はみられなかった。紫外光は瘤口閉塞用のアシストバルーン内のファイバーを通して誘導することにより、瘤口部分からの照射が可能であった。固形化したキトサンにて閉塞された瘤は、炎症反応は認められるものの、閉塞性は高く生体塞栓物質として瘤の治療に有用であることが確認された。 2.従来のコイルを用いた瘤塞栓術において、血液温度上昇により凝固血栓化が促進されることを利用し、壁の強化と瘤内器質化を目的とした新しい温熱療法を開発した。交番磁場を加えた時磁性体が渦電流損失により発熱することを利用し、実験的動脈瘤に塞栓したプラチナコイルを発熱させ、瘤内の血栓化を促進させた。結果として、プラチナ量が多いほど温度上昇が得られ、瘤内の血栓化促進は30%で認められた。コイル塞栓術の効果を高めるために有用であることが証明された。 3.側方突出型実験的動脈瘤に対するステントによる瘤口閉塞を行うために、ニチノール製の自己拡張型ステントにポリウレタン膜を貼り付けたカバードステントを作成した。基礎実験としてウレタンフィルム上に犬血管内皮細胞を播種し、インキュベーター内で接着させたところ、経時的観察にて生着は極めて良好であった。また、ウレタンコーティングステント内面に播種して回転培養を行った結果は、回転移動や流体内での剥離は少なく、約20%の血管の伸展負荷を加えても脱落や退縮などの変化は少ないことがわかった。
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