研究概要 |
初年度はまずラットC6グリオーマ細胞を定量的にラット脳幹に移植すること技術的なことに力を注ぎ、成果をあげた。具体的には5万細胞数のグリオーマ細胞を培養下に1マイクリシリンジを使用して注入。マウス仕様の定位脳装置を使用することにより中脳、橋に腫瘍モデルを作成することに成功した。移植後2週間以内で薬剤注入可能な腫瘍容量に増大する腫瘍を形成した。しかし中脳、橋ともに形成腫瘍容量には違いは認められなかった。 平成16年度はその応用の実験を重ねた。ステンレス製マイクロシリンジを移植部位に数日間埋め込む方法で注入部位を安定化させ、定量的にグリオーマ細胞を移植することを確実にした。さらに免疫組織化学的手法により移植脳腫瘍における増殖因子関連蛋白の発現を見た。主に中脳移植モデルにつき検討したが、それによると、EGFR, FGFR, VEGF, MMP familyの発現を認めた。さらに腫瘍増殖能をMIB-1 indexで評価したところ、およそ30%であることが判明した。この結果は以前我々がラット皮下に移植したC6グリオーマモデルで得られた皮下移植グリオーマモデルとほぼ同様の腫瘍増大能力があることも判明した。中脳移植グリオーマモデルが腫瘍増殖抑制因子の作用により増殖が妨げられるとの我々の仮説は完全に否定される結果となった。 しかしこの実験で得られたことがある。それは脳幹に移植グリオーマモデルを作成する過程で、マイクロシリンジが頭部腫瘍内に埋まったまま腫瘍が増大するモデルである。そのため、そのシリンジを使用して薬剤の注入が手的確に行われることが可能なモデルである。これは脳腫瘍の腫瘍内化学療法につながるモデルでもある。つまり近年盛んに試みられているconvection enhanced delivery(CED)の脳幹グリオーマモデルともいえる。このように本研究から将来につながる発展性を持った脳腫瘍治療モデルを完成させたことになる。 なお以上の研究成果は"Establishment of experimental glioma models at the in intrinsic brainstem region of the rats"としてNeurological Researchに現在投稿中である。
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