研究概要 |
脳梗塞を生じる血栓症は早期に血栓を溶解すれば、脳梗塞を改善させる事が期待できる。血栓の破砕を行なう為、1)振動撹拌装置を作成し、駆動方法を検討した。振動撹拌装置はセンサの機能も持ち、センサ機能を利用した血栓溶解度の効果を推定する方法を提案し、模擬血栓を利用しその効果を実験により示した。2)血栓に対し血栓溶解剤、機械的刺激負荷による破砕効果の検討、血管壁への機械的刺激による血管損傷程度を検討した。1)振動撹拌装置は圧電素子をアルミニウムでできた梁に貼付け作成し、周波数応答を有限要素解析すると共に,圧電素子に周期電圧を印加し、撹拌器の変位をレーザー変位計で計測し、振動撹拌装置の撹拌形態を解析した。撹拌器は入力電圧の周波数、振幅を変化させる事で、撹拌器の振動(撹拌)方向、振動(撹拌)領域、振動形態を変化させうる事を確認した。模擬血栓溶液として異なる濃度のグリセリン液を用い、2600Hz付近で撹拌器に正弦波振動を与えると,グリセリンの濃度が上昇するに伴い撹拌器の共振周波数は低下した。この結果解析から、共振周波数のシフト量から溶液の濃度を推定できる事が判明した。この計測手法と駆動の併用により,撹拌ながら撹拌効果を推定できるシステムを構築した。グリセリン溶液の撹拌実験を行い、本システムの有効性を検証した。2)血栓の破砕程度を調べる為、血栓溶解剤投与の有無、撹拌の有無に分けヘマトクリット(Ht)値の計測実験を行った。血栓溶解剤と撹拌のある時が最もHt値が高かった。ラットの大腿動脈にカニュレーションを行ない、マイクロガイドワイヤーを用いて機械的刺激を加え、血管壁の組織学的検査を行なうと機械的刺激が軽度であれば、内膜損傷が軽微である事が判明した。以上の結果より、血栓破砕には血栓溶解剤の投与に微細な振動負荷の相乗効果を利用すれば、低侵襲的な破砕効果が期待できると推論された。
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