研究概要 |
我々はこれまでの研究で頸動脈内膜剥離術(以下CEA)により摘出したplaqueのうちmacrophage(Mφ)-rich plaqueは形態的に不安定であり、酸化LDLの含量がmacrophage(Mφ)-poor plaqueより有意に高く、plaqueの不安定化に酸化LDL上昇が関与していることを報告した(Arterioscler Thromb Vasc Biol 22:1649-54,2002)。今回は生体内で抗酸化を示すパラメーターと酸化LDLの関係について検討した。対象はCEAを施行した35例で、男性32例、女性3例であった。このうちの23例は症候性であった。CEAで摘出したplaqueは免疫組織学的にMφ-rich(n=16)とMφ-poor(n=19)とに分類した。Plasma中およびplaque中の酸化LDLはDLH3抗体を用いたELISA法により測定し、抗酸化の指標としてMnSOD, Cu-ZuSODおよびNOの測定を行った。酸化/抗酸化能のバランスの指標として各測定値から酸化LDL値との比を算出した。Mφ-rich plaqueの酸化LDL値は22.4±3.6(ng/μg apoB)でMφ-poor plaqueの4.85±0.90に比べて有意に高く(p<0.001)、plasma中でも0.247±0.017とMφ-poor plaque例の0.173±0.026に比べて有意に高かった(p=0.01)。このplasma中の酸化LDLの上昇はOxLDL/Cu-ZnSOD比、OxLDL/NO比と有意な相関を示した(p<0.05,p=0.01)。またOxLDL/MnSOD比とも相関傾向があった。この研究から不安定性頸動脈plaqueの進展に関係する酸化LDLの上昇は生体の酸化機構の活性化に抗酸化機能が対応不可能になり、そのバランスに不均衡が生じることが一因と考えられた。
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