研究概要 |
前年度の研究により、ラット自家血大槽内2回注入法により、血管平滑筋壊死をきたす、よりヒト脳血管攣縮に近似したくも膜下出血モデルを確立した。この2回出血モデルを軽度の攣縮しかきたさない1回出血モデルと比較することにより、以下の研究を行った。 1.攣縮血管壁のBcl familyの変化 出血前、出血後3日、5日、7日に生食灌流後に脳底動脈を中心とした動脈を採取した。採取したサンプルをホモジナイズ後、12% SDS-PAGE法を用いて、Western blotにて検討した。検討したBcl familyは、BCl-xL/S,Baxとした。その結果、1回出血モデルではBcl-xL,xS,Baxのすべて経過中変化を認めなかったのに対し、2回出血モデルではBcl-xL,xSは出血後3日より低下し、出血後5日で最も低下していた。また、2回出血モデルのBaxも、出血後5日で増加していた。 2.ミトコンドリアよりのcytochrome cの漏出の評価 前記のBcl familyの検討と同様に、ラット自家血大槽内注入モデルの脳血管を摘出し、Western blotにてcytochrome cのミトコンドリア分画から細胞質分画への漏出について検討した。その結果、1回出血モデルではcytochrome cはミトコンドリア分画のみより認められていた。しかし、2回出血モデルでは、出血後5日より細胞質分画へcytochrome cが漏出していた。 以上の結果より、ヒトにより近いくも膜下出血モデルであるラット2回出血モデルにおこる脳血管攣縮においては、出血により、Bcl\xLの減少、Baxの増加により、ミトコンドリア膜の透過性亢進が起こり、それに伴ってcytochrome cの細胞質への漏出が起こっていた。Cytochrome cの漏出に伴い、さまざまなcaspase系の活性化が惹起され、appototicな変化を起こすことが、攣縮血管の変性・壊死に関与しているものと考えられた。
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